2008年05月09日

『戦場のメリークリスマス』の原作『影の獄にて』

影の獄にて影の獄にて
L. ヴァン・デル・ポスト Laurens Jan VAn Der Post 由良 君美

新思索社 2006-10
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レビュー

L・ヴァン・デル・ポスト『影の獄にて』。
映画『戦場のメリークリスマス』の原作。
映画公開25年目でようやくこの本を読み終えました。本の感想だけを書ければいいのですが「戦メリ」は映画を何度も観て、サントラは繰り返し聴き続けている作品。教授が「戦メリ」の仕事に携わらなければ、83年がわたしにとっての分岐点になっていなかったかもしれない。読書中もサントラを聴き、DVDを鑑賞し、この世界に惹かれた理由を模索、思案、検討。
結局は好きでたまらないんですが。。。

他人を理解し、許すことがテーマ。

映画を鑑賞した時は、前評判どおり、場内が明るくなって同級生に「わからない」と呟いた。夏休みは「戦メリ」の特集記事が書かれている本を立ち読みしたり、家では毎日のようにサントラのピアノヴァージョンの『Avec Piano』を聴いていた。寝ても冷めて「戦メリ」。恋をしたような感じで「戦メリ」が頭の中のウェートが高くなっていった。年明けにもう一度、映画館で鑑賞すると北野武の「ふぁーぜるくりすます」に熱いものがこみ上げたことを想い出す。一度目はスクリーンに映る教授ばかりを観ていました。また「SEED」のテーマが流れると背中に電流が走り鳥肌が立つほど、このサントラの中では好きな曲。この曲を生で聴くことができたのは88年の『ラストエンペラー』でアカデミー賞を受賞直前のオーケストラコンサート。この時も初めて聴いた感動が再現された。またライヴでも「戦メリ」は一番演奏の多い曲。教授の演奏を初体験したのは「Media Bahn LIVE」の最終日。ピアノメーカーと共同開発MIDIピアノで奏でられた。演奏が始まると拍手が起き、客席はシーンと耳を澄ませた。ピアノの音色から始まり、それが徐々にサントラの音色に変化、ただ感動し感激。22年前ですが鮮明に覚えている。また、当時はビデオソフトが高くて購入できず、テレビ放送はいつだろうと思っていたら、84年の夏のラジオ番組で「今年放送予定です。吹き替えはどうなるんでしょう」と教授が話し、首を長くて持ちました。

さてと、本の感想に移りましょうか。

繰り返し観た「戦メリ」。映画は原作を忠実に描いていました。ストーリーをドラマティックにするために順番などは違いますが、ほぼ印象的なシーンは本の描写のまま。例えば、ラストシーンのハラとローレンスの別れや、コマーシャルでも頻繁に流れたヨノイとセリアズ(本ではセリエ)の抱擁や、セリアズが生き埋めになり、そこにヨノイが現れて髪を切るシーン。どのシーンも読みながら情景が頭の中で再現されました。
文章は叙情的で耽美。漢字レベルは若干水準が高いですが、そのへんは雰囲気で読みました。
ハラとローレンスを横糸に、セリエとヨノイ、セリエの弟が縦糸に物語りは綴られる。彼らは人種、特性などを理解しようとするが、戦争、時代や環境でそれができず、最期に許しを蒙る。このヒューマニズムは、10代に感じたものより深く何度か涙腺が緩んだ。
なぜあの印象的な音楽が「SEED」というタイトルだった理由も理解。ちょっと時間がかかり過ぎたかな。
この一文が、すべてを語っていると思う。
「風と霊、大地と人間の命、雨と行為、稲妻と悟得、雷(いかづち)と言葉、種子と蒔く者に、みずからの行為のなかに蒔いて欲しいと祈ればよい。それだけで、ふくよかな黄金なす実りは、すべての人のものとなるのだ」と。


わたしの中に息吹が生まれるのを感じた。

セリエとヨノイの関係は同性愛と捉えることもあるようだが、もっと人間の根源としての突き動かせる感情。また、障害のある弟とセリエの関係は本のほうが繊細さ冷酷、葛藤は映画以上に鮮烈。

この本は残念ながら曇って見ることはできなかかった4月の満月の夜に読み出した。月の情景がくっきりと脳裏に浮かぶ。そして色んな意味で人を理解し、互いに許すことの大切を知った。
25年かかったらこそ、心に染み入るのでした。
ニックネーム 美結 at 21:25| Comment(6) | TrackBack(0) | 海外の本
この記事へのコメント
はじめまして。

そこまで繊細で丁寧に見ることができて、とても羨ましいです。

原作本、注文してみたけれど、手に入らなくなってしまいました。
そのうち読めると信じています。


Posted by まなたん at 2008年12月26日 16:25
「恋をしたような」という気持ちをそのまま書けることに、心打たれました。

私もまさしくそんな気持ちです。


映画館で見られなかったことが、心残りです。
Posted by まなたん at 2009年01月10日 12:55
私もまさしく、恋をした気分でした。

映画館で見られなかったことが、心残りです。

けれど私の場合、好きになるのに時間がかかりました。

というよりは、好きだ言い切るのに悩み苦しみ続けたという方が、近いかも。


優柔不断にしては激しく、困惑にしては幸せな、妙な気分でした。

たった1作の映画のために…


かつて、坂本龍一のヨノイに直視できませんでしたが、今では、私が戦メリに対する秘めた激情とヨノイの表情心情が重なって仕方ありません。


Posted by まなたん at 2009年01月10日 13:34
>まなたんさん
はじめまして
amazonだと入手しづらいようですが、本屋さんなどで取り寄せてしてみてはいかがですか?
出版社に在庫があれば手に入ります。
また、図書館などでは旧版が所蔵していることもあります。
個人的な感情で、好き嫌いは変わったり、揺れたりするもの。
わたしはタイミングと思っています。
Posted by 美結 at 2009年01月10日 14:17
美結さま、いろいろとすみません。


こちらに書き込みをしていると、いつもワザとのように、どこからかメールが入り、そのせいか送信が上手くいかなくなって、先程のように、2度もコメントが入ってしまいました。


14年前にジュンク堂で戦メリ本を見つけたときは、執着も薄れ、買わないどころか立ち読みもせずに帰ってしまい、本当にバカなことをしました。


まさしくタイミングです。


1983年に戻りたぁ〜い!
Posted by まなたん at 2009年01月10日 17:38
実はあれから古本屋を頼って検索し続けて、ようやく注文できることになりました。

携帯電話からだと、なかなか上手くいきませんでしたが、ネット情報には、大変感謝しています。独り妄想にさいなまれずに済むようになったからです。


美結さまのような方が存在することを知って、とても嬉しく思います。

有難うございました。
Posted by まなたん at 2009年01月10日 21:19
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